すな粉妄想日記

一瞬、顔を赤くしかけて、
ユーゴは気づいた。

頭に閃いた言葉を、すぐさま口にする。

「エリック＝サティ」

それを聞いたダレスは、
弟に向かってにっこりと微笑んだ。

「できれば君に、曲名を言ってもらいたかったな」

そんな台詞をさらりと言う。

「兄上…」

思わずユーゴは眉を寄せて
しかめ面を作った。

なんて意地が悪い、と目で訴える。

普通に聞いたら、告白としか
思えないではないか。

ほんの少しでも
うっかり胸を高鳴らせてしまった自分が、
恥ずかしくてならなかった。

我が兄ながら、何を考えているのだろう。

からかわれているのだという事は分かるが…

見た目が綺麗なだけに摑みどころがない。

同じ兄弟でも、すぐ上の兄とは大違いだった。

トールは考えている事が
実にあっさり顔に出る。

嘘や隠し事ができないタイプだ。

だから、側にいると安心する。

弟の自分を大切にしてくれている。

そんなトールが、ユーゴは大好きだった。

…♪

「！」

澄んだ音が、部屋に響く。

ダレスがまた、ピアノを奏で始めたのだ。