すな粉妄想日記

入り口に佇む弟の姿を見ると、
ダレスは軽く目配せをした。

ユーゴは頷き、静かにソファへ歩み寄る。

ゆっくり腰を下ろすと、
そのまま兄の演奏に耳を傾けた。

白く細い指が、心地良い旋律を紡ぎ出す。

音楽もさる事ながら、
それを弾く兄の姿が綺麗だと
ユーゴは素直に思った。

自分もそれなりに自信はあるが、
目の前の兄には到底敵わない。

しなやかに、淀みなく。

指の動きに合わせるかのように
さざめく銀の髪。

演奏が終わるまでの間、
ユーゴはうっとりと聞き惚れていた。

いや、見とれていたと言った方が
正しいかもしれない。

端正な顔立ちの男性が、
優雅にピアノを奏でる様は確かにそれだけで
絵になるものだ。

一通り弾き終わると、
ダレスは弟の方へ視線を向けた。

「この曲を、知っているかね？」

恍惚としていたユーゴが、はっと我に返る。

兄の言葉を素早く頭の中で反芻すると、
慌てて答えを探した。