すな粉妄想日記

（おかしいのはお前だ）

（おかしいのはあんたよ）

ガレオンとカデナはほぼ同時にそう思ったが、
あえて口には出さなかった。

本来ならば仏のごときこの２人の友情に、
トールは心から感謝すべきところである。

が、所詮は不器用が売りのトールの事、
頭の中はユーゴで一杯だった。

「夕べは、どう考えても…」

そのまま空気を読まずに語り始める。

曰く、

帰って来た弟の様子がいつもと違っていた。

何だかやけによそよそしくて、
目を合わせようとしない。

話しかけても上の空で、
食事が済んだらさっさと自分の部屋に
引き上げてしまった…等々。

「俺が何かしたんだろうか」

思い出すうちに悲しくなってきたらしく、
トールの表情が沈み込む。

世界の全ての不幸を
背負ったかのような落胆振りである。

しょげかえったその姿を見て、人の好い
ガレオンは少し気の毒になった。

「それは…、うむ…」

腕組みをしながら真面目に答を探し始めた。

考えたところで分かるはずもないのだが…

「もしかしたら、体調が悪かったんじゃないか」

これがガレオンの思考力の限界だった。

「お前を心配させたくなくて、
気付かれないよう避けていたとか…
嫌われた訳じゃないと思うぞ」

その言葉を聞いて、意気消沈していた
トールの顔がぱっと明るくなる。

「そうか…、そうかもな」

満足そうにうんうんと頷く。

が、すぐに真剣な面持ちで呟いた。

「具合が悪いのに気付かなかったとは…
兄失格だ」

「ああ。今度から気をつけるといい」

ガレオンもトールに習って頷いた。

（………はぁ）

２人の話に黙って耳を傾けていたカデナが、
大きく溜め息をつく。

（駄目だわ…こいつら）

男というものは、何故こんなに
鈍感なのだろうか。

（そんなのもう、決まってるじゃない）

しかし、おそらく当たっているであろう
カデナの予想をトールに告げるのは、
いささか酷な気がした。