すな粉妄想日記

トールは気を揉んでいた。

ここ最近、弟の帰りが遅い。

時計はもう８時を回っている。

夕食の支度は、先に帰ってきた方が
する約束になっていた。

今までは大抵、ユーゴがその役目を
こなしていた。

それに引け目を感じて、トールも
１品か２品、おかずを買って帰る。

兄弟２人揃ったところで、
仲良くテーブルを囲む…

それが日課となっていた。

なのに。

１週間程前から、
弟の帰りが遅くなった。

が、毎日、

『今日は遅くなるかもしれない』

と連絡はして来るので、
そう心配する必要はないのだろうが…

どこで、何をしているのか。

まさか、家に帰りたくない理由でもあるのか？

考えが悪い方へと向かったその時、

「ただいま」

「…！！」

ユーゴの声に、
トールの思考は中断された。

慌てて立ち上がり、
玄関へと向かう。

「お帰り、ユーゴ。…遅かったな」

「うん。ごめん、またご飯の支度させて…」

「いや、そんな事はいい。今まではお前が
してくれてたんだからな」

トールはそこで、軽く咳払いをした。

『どこに行ってたんだ？』

そう尋ねたいのを、ぐっと堪える。

ユーゴはもう、小さな子供ではない。

自分のしている事くらい、
きちんと分かっている筈だ。

大体、いつもこうして
ちゃんと帰って来るではないか。

何食わぬ顔でトールは言った。

「それじゃ、夕食にするか」

「うん。ありがとう、兄さん」

嬉しそうに顔綻ばせる弟を見て、
トールは思わず胸を熱くするのだった。