すな粉妄想日記

ダレス王子の細い指が、俯くユーゴ姫の顎を捕らえました。

半ば強引に自分の方へ顔を向けさせます。

「あ……」

その表情を見たユーゴ姫は、
思わず息を呑みました。

つい先程までの穏やかな微笑みが
王子の顔から消えていたからです。

その瞳は冷たい輝きを放っていました。

鋭い視線が姫を貫きます。

ユーゴ姫は恐怖のあまり、
指一本動かす事さえできませんでした。

ただひたすら、身を竦ませるばかりです。

沈黙が重く圧し掛かりました。

やがて、

「……ユーゴ姫」

ようやくダレス王子が口を開きました。

「貴方は、私のものになるのです」

「…！！」

口調こそ丁寧なままでしたが、
その言葉はまるで命令でした。

姫は王子から、氷のような揺るぎない
意思を感じ取りました。

恐くて恐くて、たまりませんでした。

けれど抵抗する力などありません。

蜘蛛の巣に絡め取られた蝶のように、
体を震わせるだけでした。

「それを……」

再び、相手の表情に微笑みが戻りました。

しかしそれは今までのものとは異なる、
冷たく勝ち誇った微笑でした。

「じっくり、分からせてあげましょう」