すな粉妄想日記

一連の出来事が収まった後…

兄弟は２人きりで、ベランダに佇んでいました。

あの騒ぎがまるで嘘のような、
静まりかえった夜でした。

月が美しく輝いています。

２人は黙ったまま、しばらく
静寂の中に身を置いていました。

「……兄さん、」

やがてユーゴの方から、口を開きました。

「昼間のあれは…本気なのか？」

弟の問いかけにトールが答えます。

「ああ。もう決めたからな」

その答えを聞くと、ユーゴは俯いて、

「……ごめん…」

悲しそうな表情で言いました。

「僕のせいで…兄さんに迷惑ばかり…」

「ユーゴ…？」

辛そうに顔を歪めた弟の姿に、
トールが困惑の色を浮かべます。

「兄さんは僕のために…あんな怪我までして」

その声は小さく震えていました。

「後継者の地位まで…捨てて…」

次第に涙が交じってきます。

「…僕の…、せいで……」

とうとうその頬を、大粒の涙が伝い始めました。

途切れ途切れの言葉は嗚咽に変わります。

今までずっと抑えてきたものが、
堰を切ったように溢れ出したのでした。

「ごめんなさい、兄さん…！！」