すな粉妄想日記

勝利したのは、ユーゴでした。

「…馬鹿な…」

ダレス王子は膝をつき、
信じられないといった
表情を浮かべていました。

誰の目にも明らかな決着がついたのです。

「さすがはファクト家の…！！」

「素晴らしい…！！」

割れんばかりの歓声が轟きます。

誰も彼もが予想外の出来事に
驚き、困惑し、興奮していました。

「………」

流石のカインも黙ったまま、
人々の熱狂する様子を見つめています。

どうにかこの騒ぎを鎮めなくてはと、
考えを巡らせていた矢先…

驚くべき事態が起こりました。

「皆様…聞いて下さい！！」

人波をかき分けて、トールが現れたのです。

「！？トール、貴様…」

走り出て来たその姿を見て、
カインは驚愕しました。

実はトールは、今までずっと
眠りの魔法をかけられていたのです。

王子との決闘の件で、何をするか分からないと
カインが危惧したからでした。

しかし、魔法の効果は予想以上に
早く切れてしまったのです。

目を覚ましたトールは、急いでこの場に駆けつけました。

そして状況を判断するや否や、
突然こう告げたのです。

「私はファクトの家を出て、騎士になります」

驚天動地の告白でした。

それは同時に、後継者の地位を
捨てるという事でもあったからです。

「なんと……！！」

「ファクトの跡継ぎが…？」

人々の間に、更なるどよめきが広がります。

しかしトールの決意に最も
衝撃を受けたのは、他ならぬユーゴでした。