すな粉妄想日記

「兄さん」

涙を零しながら、ユーゴが口を開いた。

トールは慌てて気を引き締める。

何を言われようと、動じてはいけない。

クール、そう、クールだ。

努めて険しい表情を作る。

「…どうして…そんな風に…？」

悲しそうな声だった。

魔を受け入れ、裏切り者となった兄を
憎むどころか、案じる言葉。

トールの胸がずきりと痛む。

視線が針のように突き刺さる。

「…トール＝ファクトは死んだ」

弟をはねつけるため、
考えに考えた台詞を口にした。

必死の努力にもかかわらず
もの凄い棒読みになったが。

「今ここにいるのは…闇の…、」

「嘘だろ」

涙声でぴしゃりと遮られた。

「兄さんが…裏切るはずない」

「…！！」

自信と信頼に満ちた、ユーゴの言葉。

たまらずトールの目頭が熱くなる。

弟は…それ程までに自分の事を
信じているのか。

後継者の地位を捨てて家を出た、
身勝手で我侭な兄を演じたはずなのに。

憎まれこそすれ、
愛されるなどとは…

「くっ…！！」

まずい。

本気で泣きそうになってきた。