すな粉妄想日記

「だが…ユーゴ、お前には…」

そう言ってトールは表情を曇らせる。

その胸は、ユーゴと同じく罪悪感に満ちていた。

家を出た事を、後悔はしていない。

けれどもそのせいで、結果として
弟に重荷を背負わせてしまった。

後継者の重圧は、嫌と言う位
分かっている。

まして、兄の後釜となれば尚更だ。

ユーゴのプレッシャーはどれ程のものだっただろう。

なのに自分は、そんな弟を支えてやれない…

その事実が、常にトールを苦しめていた。

「本当に…すまない」

弟を抱きしめながら、再び告げた。

脳裏に蘇る過去の記憶。

後継者の地位を捨て、
騎士になる道を選んだのは、
紛れもなく自分の独断によるものだった。

周りの人間は皆、反対した。

当然…父親も。

あの時、弟が見せた悲しそうな瞳は、
今でも目に焼きついている。

しかしトールは、それら全てを振り切って
自分の意を通した。

進むべき道は、自らの意思で決めたかった。

自分が、自分であるために。

そう決意した理由は、

「……兄さん」

「！」

腕の中の弟が呼びかけてきて、
トールは我に返った。