すな粉妄想日記

その夜。

「兄さん…一緒に寝てもいい？」

遠慮がちに、ユーゴが尋ねてきた。

「ああ、もちろんだ」

トールはにっこり笑って快諾する。

すると、弟は嬉しそうに兄を見て
駆け寄ってきた。

その瞳には、愛情と尊敬が
溢れんばかりに浮かんでいた。

２人一緒に、トールのベッドへ潜り込む。

ひんやりした感触が
兄弟を包んだ。

ユーゴは兄のぬくもりを求めて
ぴったりと体を寄せた。

「…あったかい」

「俺は、湯たんぽ代わりか？」

兄の抗議？に、弟は声を上げて笑う。

寂しくない夜なんて、いつ以来だろうか…

「兄さん…」

ユーゴは愛しさを込めて
兄を見つめた。

大好きな、兄。

いつまでも側にいるものと
思っていた。

少なくとも、大人になるまでは…

明日になれば、また兄は行ってしまう。

次にこうして会えるのはいつになるだろう。

このまま夜が明けなければいいのに…

「…すまないな」

突然、トールがぽつりと呟いた。

「え？」

「お前に…辛い思いをさせて」

弟の心を察したのか、
兄は悲しそうに告げた。

「父上は、厳しい人だ。…苦労してるだろう」

「…！！」

その言葉を聞いたユーゴは、
少なからず戸惑いを覚えた。

苦労……

苦労と言われて、思いを巡らせる。

確かに訓練は辛いが、
それは当然の事として受け止めていた。

自分は、ファクト家の後継者なのだから。

辛いと感じても、それを苦労だと
思った事はなかった。

「………」

どう返事をしたらいいのか
迷っているうち、悲しみを帯びた兄の声。

「俺が家を出たせいで…
お前に、重荷を背負わせてしまった…」