すな粉妄想日記

唇に感触を感じて、
トールはふっと目を覚ました。

「……？」

ぼんやりとした頭で
状況を把握しようと試みる。

「……ん…」

聞き慣れた声が微かに響く。

「トール…兄さん…」

泣いて、いるのか…？

悲痛な呼び声が、
トールの意識を一気に引き戻した。

「ユーゴ…？」

手を伸ばして、傍らの存在を確かめる。

指先に触れた頬は
涙に濡れていた。

「……！」

途端、相手が体を強張らせる。

小さく息を呑むのが分かった。

「…どうか、したのか？」

何かあったに違いない。

そう直感したトールは、
優しい声で弟に尋ねた。

するとユーゴはそのまま
泣きじゃくりながら抱きついてきた。

「…兄…さん…」

肩を震わせ、嗚咽の合間に
呟きを漏らす。

「ごめん……」

途切れ途切れの、か細い声。

「ユーゴ…？」

トールは弟の言葉に
疑問を覚えたが、追及はしなかった。

黙って背中を抱いてやる。

「……っ…、…う…」

ユーゴは息を詰まらせ、
兄の腕の中で泣き続けた。

そうして。

「…僕は…」

決心したように、ユーゴが口を開いた。

「兄さんが……好きだ」