すな粉妄想日記

突然、携帯の呼び出し音が部屋に響き渡った。

ユーゴが顔を上げて眉を曇らせる。

鳴っているのは、ダレスのものだ。

誰からの電話か…確認するまでもない。

ダレスはユーゴに視線を向けたまま、
携帯を手に取った。

何か言いたそうな恋人を
目で制し、電話に出る。

「……もしもし」

相手は予想通りだった。

「そこにユーゴが、いるだろう？」

息せき切ったトールの声に、
ダレスは思わず吹き出しそうになった。

電話の向こうでさぞかし
慌てふためいているのだろう。

ユーゴを見ると、険しい表情で
首を振っている。

黙っていてくれ…と言いたいのだろう。

しかし、そこまで物事をこじらせる訳にもいかない。

ユーゴがここにいるというだけで、
相手はこれ以上ないほど取り乱しているのだから。

「もちろんだとも」

ダレスは正直に答えてやる。

僅かな沈黙の後、苦しげにトールが訴えた。

「……俺と話してくれるよう、言ってくれないか？」

どうやらユーゴには着信拒否されているらしい。

「頼む」

必死で笑いを堪えながら、
さてどうしたものか…とダレスは考えを巡らせた。