すな粉妄想日記

僕が、初めて兄とそういう関係になったのは、
冬になる前の事だった。

空気も風も冷たくなって、
夜はかなり寒くなる。

だから僕は、兄のところで暖まろうと思った。

逞しい兄の隣で眠るのはとても安心できたし…

それに…気になる事があった。

いつも通りのように見えるが、
今日の兄はどこかおかしい。

いや…前々から何か、悩んでいるようではあった。

ただ僕はそれを漠然と、
神官家の長男という立場からくるものと
思っていた。

ファクト家の後継者ともなれば、
周囲からの重圧は相当なもののはず。

訓練も厳しいし、疲れてもいるだろう。

ただ兄は…そんな様子は微塵も感じさせなかった。

いつも前向きに、堅実に、日々を過ごしていた。

僕に対してはひたすら甘く、
過保護すぎるくらいだった。

正直、うっとおしいと言いながら、
僕は内心喜んでいた。

兄の事が…大好きだったから。

無条件に注がれるその愛情に
ひたすら甘えていた。

優秀で、優しくて、
兄は本当に非の打ち所のない人物だった。

けれどその日…

僕は、見てしまったのだ。

夕暮れ時の廊下に佇む兄の横顔を…

それは今まで、見た事のない表情だった。

思い詰めたような、真剣な顔。

何か、とてつもなく重大な決心を
しようとしているような…そんな表情。

その姿がひどく寂しげに見えたのは、
夕日に照らされていたせいだけではないだろう。

僕は一瞬、兄がどこかへ行ってしまうのでは
ないかという不安に駆られた。

しかし、声をかけるのはためらわれた。

だから時間を置いて、夜、兄の部屋を
訪ねる事にしたのだ。