すな粉妄想日記

肌寒い秋の夜。

ユーゴが部屋で静かに
読書に耽っていると、突然
ドアを叩く音がした。

兄さんだな…と予想して眉を顰める。

こんな時間に何を思いついたのやら。

訝しみつつ、扉を開けた。

「…？？？」

思わずユーゴは目を見開く。

そこに佇んでいたのは…
白いシーツの塊。

呆気に取られて
ぽかんとしていると

「Trick or Treat！」

目前の物体はそう言葉を発した。

「………」

それを聞いたユーゴは、
深々と肩を落として溜息をつく。

「何してるんだ？あんたは…」

「お菓子をくれないと、悪戯するぞ？」

お化けに扮した兄は
弟の質問に答えず、
お決まりの台詞を繰り返した。

そう、今日はハロウィンなのだ。

子供達が仮装をして
家々を回りお菓子をもらう。

ユーゴも兄もそんな真似をする
年ではないから、特に意識していなかった。

なのでもちろんお菓子の用意などしていない。

「Trick or Treat！」

お化けの兄がしつこく叫ぶ。

「………」

いい歳をして何をやっているのか…

ユーゴはうんざりした顔で
兄に告げる。

「お菓子なんてない。帰れ」

「Trick or Treat！」

「ないって言ってるだろ？」

すると、白い物体は突然

「Trick ！」

と雄叫びを上げた。

「！？」

そして、ユーゴに襲いかかる。

「なっ…！！」

驚いたユーゴは
咄嗟に逃げようとしたが、遅かった。

あっさり捕まり、
そのままベッドへ突き倒される。

「何を…」

抗議しかけたところに、
お化けが覆い被さって来た。

「お菓子をくれないなら…」

殊更低い声色を作って
兄が言った。

「悪戯するぞ」