すな粉妄想日記

「……兄さんのようになりたかった」

ぽつりとユーゴが呟いた。

「強くて、優しくて…自信に溢れている、
そんな兄さんみたいに」

弟からの告白を聞いたトールは、

「……随分と過大評価されたものだな」

照れたように頭を掻く仕草を見せる。

「俺は…そんな立派な人間じゃなかったぞ」

幼い弟の才能に嫉妬し、恐れた。

結果、長男のくせに家を出て、
跡継ぎを押し付けるような奴だったのだから。

「でも……、嬉しかった」

ためらいがちにユーゴが言う。

「兄さんが僕の才能を、認めてくれていたなんて」

「……！」

トールは思わず息を呑む。

胸の奥がずきりと疼く。

まだ子供だった弟に、酷な事を
してしまったという自責の念と、
誰かからの評価を渇望していたであろう
彼の心情を想像して。

あまりにも強すぎた、父ーカインの呪縛。

自分はファクト家から離れた事で、
そこから逃れる事ができた。

けれどユーゴは……

「……すまなかったな」

トールは弟の華奢な体を、
きつく抱きしめた。

こんなにも愛しく想っているのに。

自分の未熟さから、辛い思いをさせてしまった。

もう……解放してやりたい。

ユーゴ。

お前は、お前なのだと。

ファクトの名に捕らわれる必要などないのだと。