すな粉妄想日記

触れた唇は、思っていたよりもずっと
温かく、柔らかかった。

「……ん」

そして思っていたよりもずっと
官能的で、刺激的だった。

「…ふ……」

ユーゴは精神が高揚するのを感じて、
思わず身を震わせる。

初めての、口付け。

破裂しないのが不思議なくらい
鼓動が脈打つ。

強烈な感覚に頭の芯がぼうっとしてくる。

（……兄さん…）

兄は…どう思っているのだろうか？

どんな表情をしているのだろうか？

興奮しながらも、それを確かめるのが恐くて
ユーゴは動けないままでいた。

感覚が麻痺したかのように
時間の感覚が分からない。

まだ数秒なのか、それとも…

「！」

突然、ユーゴの思考は中断する。

背中に兄の腕が
回されてきたからだ。

逞しく、力強い抱擁。

はっとして顔を上げると、
兄の視線とぶつかった。

「…！！」

真剣味を帯びた眼差し。

先程のユーゴと同じような…

瞳の中に囚われる錯覚を覚えて、
全身に再び緊張が走る。

沈黙した空気が、たまらなく重く感じられた。

「兄…、さん…」

耐え切れず相手の名を呟くと、
トールが低い声で答えた。

「…本気、なんだな」