すな粉妄想日記

地上に降りる日が、刻々と近づいていた。

雨の音が間断なく窓を叩く。

ユーゴはぼんやりと灰色の景色に視線を移した。

雨は一向に止む気配を見せず、激しさを増すばかり。

ユーゴの脳裏に自然、
昔の記憶が浮かび上がる。

こんな嵐のような日、ユーゴは決まって
兄のベッドに潜り込んだ。

兄がいなくても、守られている気持ちになれたから。

そして毛布にくるまった弟を、
帰って来た兄は優しく包んでくれた。

何も心配しなくて良いのだと
安心させてくれた。

温かい兄のぬくもり…

幸せだった。

幸せな思い出だった。

しかし…

今となっては、もう。

兄が後継者の地位を捨て、家を飛び出し、
そればかりかイースの裏切り者となった今…

昔の記憶は最早、ユーゴを責め苛む重荷でしかない。

自分の決意を鈍らせるものだ。

…忘れなくては。

あの男はもう、兄ではない。

恥ずべき裏切り者だ。

迷いを振り払うように頭を振って、
ユーゴは自分のベッドに身を横たえる。

冷たいシーツの感触が、何故だか
妙に不愉快だった。