すな粉妄想日記

隣でうたた寝している弟の顔を
トールはじっと見つめていた。

線が細くて中世的なその顔立ちは、
うっかりすると女の子に間違われてしまいそうだ。

小さな寝息を立てながら
無防備に眠るユーゴ。

兄であるトールから見れば、
その姿はまだまだ子供だった。

なのに…

『私とユーゴは』

昨日告げられた言葉が
脳裏に浮かぶ。

『深い仲になった』

鮮明に何度も、何度も。

『一応、兄である君には
報告しておこうと思ってね』

父と自分の共通の知人である、ダレスからの。

つきあっている事自体は、
以前ユーゴ自身から聞いて知っていた。

かなり驚きはしたものの、
相手が知人で分別もある大人だったから
さほど心配もしていなかった。

それが、どうだ。

何の前触れもなく、弟は…

「………」

トールは複雑な思いで
ユーゴに視線を注ぎ続けた。

たった１人の自分の弟。

生まれた時からずっと側にいた。

今までずっと愛情を注いできた。

その愛しいユーゴが、

他の誰かに抱かれたというのか。

一糸纏わぬ姿を晒して。

あられもない声を上げて。

「………っ、」

トールは思わず唇を噛み締める。

胸の奥から何か
苦い感情が湧いてくるのを、
自覚せずにはいられなかった。