すな粉妄想日記

小さな肩だった。

そうだ。
いくら才能があるといっても、
弟は、ユーゴは少年…
保護者の立場から見ればまだまだ
子供といってもいい年なのだ。

それにもかかわらず、
六神官の筆頭格であるファクト家に
生まれてしまった為に、どれだけの重荷を
この肩に背負って生きて来たのだろうか。

自分が投げ捨ててきたものを全部、
いやおそらくそれ以上のものを
ユーゴは受け入れて、ここまで歩んで来たのだ。

騎士の道を選んだ事を、後悔はしていない。
それが自分の進むべき道であったと、
今でも確信している。しかし…

それが弟に、望まぬ道を押し付ける結果に
なってしまったのかもしれない。
重すぎる期待を背負わせる事にも…

ふと気がつくと、ユーゴが小さく体を震わせていた。

「…？」

（泣いて、いるのか…）

弟は独りで耐えて来たのだ。
自分が家を出て行ってから今までずっと。

トールは胸に熱いものが込み上げて来るのを感じた。
腕の中に納まってしまう程に小さな体が、
たまらなく愛おしかった。

そっと髪に触れて、頭を優しく撫でてやる。

母親が泣きじゃくる子供をあやすように。

もう何も心配する事はないのだと。

「…兄、さん…」

「すまなかった…ユーゴ」

きつく抱きしめて、耳元で囁く。

「愛している」