すな粉妄想日記

「はあ…」

大柄な体格に似合わぬ様子で
ガレオンは溜め息をつく。

（どうしたものか…）

何度も足を踏み入れようとしては、
その度に躊躇する。

視線を向けながら
なんと自分には似つかわしくない
場所なのかと途方に暮れた。

いっそ別の所へと
考えないでもなかったが、
おそらくどこも似たり寄ったりのはずだ。

（ええい、こうなったら…）

覚悟を決めて足を踏み出そうとした時、

（！？あれは…？）

ガレオンの視界に
意外な人物の姿が写った。

彼と同じく、こんな華やかな場所には
およそ縁がないであろう人間。

「トール…！？」

思わず声に出して
名前を呼ぶ。

もっとも距離があるので
相手に聞こえる心配はなかった。

その相手、トール＝ファクトは、
小さな袋を大切そうに抱えて
店から出て来た。

綺麗に包装された包みは明らかに、
誰かへの贈り物である。

（…意外だな）

自分の事は棚上げで
ガレオンは目を丸くする。

そしてふいに可笑しくなった。

（そうか…あいつも）

今の自分のように、ホワイトデーの
お返しを調達しに来たのだなと察しをつける。

奇妙な親近感を感じながら、
ガレオンは友の姿を見送った。

トールの表情は幸せそのものだった。

余程、想い入れのある相手なのだろう。

（よし…俺も）

友に勇気付けられ、ガレオンは
店へと足を踏み入れた。