すな粉妄想日記

目前にあるのは、
求めて止まなかった兄の姿。

しかし、その前で裸身を晒しているという事実に
ユーゴは戸惑いを隠せない。

一糸纏わぬ自分の姿が兄の瞳に映し出されて、
全身がかあっと熱くなった。

恥ずかしさのあまり顔を背けると、

「俺を見るんだ」

穏やかだけれど有無を言わさぬ口調で
そう要求された。

仕方なく顔を上げて兄と視線を合わせると、
心臓がはちきれんばかりに高鳴った。

愛しそうに自分を見つめる兄の姿に、
ユーゴはたまらない気持ちになる。

（…トール兄さん…）

黒い感情に突き動かされるまま、
ただひたすら追いかけて来た。

劣等感を、拭い去るため。

自分こそがファクト家の後継者だと、
思い知らせてやるため。

そう思い続けて。

心の奥底に秘めた兄への愛情を
怒りと憎しみで抑えつけ、
復讐の炎を燃やし続けた。

なのに…

それが今、堰を切ったように
溢れ出して来てしまった。

自分でも驚く位だった。

こんなに狂おしい感情が、
自分の中にあったなんて。

こんなに兄の事が、
愛しくてたまらなかったなんて。