すな粉妄想日記

「満足したかね？」

魔道師が少年に問いかける。

黒衣の少年は表情ひとつ変えず、
紅い瞳を怪しく輝かせている。

その足元には、彼の兄が
満身創痍で倒れ付していた。

必死に立ち上がろうともがく姿は、
まるで羽を毟られた蝶のようで。

少年…ユーゴはそんな兄を
冷ややかに見下ろす。

何を思っているのか、
瞳からはどんな感情も読み取れない。

「優劣は明らかだな」

少年の耳元でダレスが囁いた。

「あとは…好きにするといい」

淫靡な笑みを浮かべて、
魔道師は踵を返す。

数秒後、転移魔法の光が辺りを包んだ。

残された人影は２つ。

弟、そして兄。

「…………」

ユーゴはゆっくりと、膝を突いて屈み込んだ。

紅い瞳の奥で何かが揺らめく。

歪な炎のような感情。

心の中で燃えさかる、激しい欲望。

紛れもなく兄へと向けられたものだった。

しかし、トールがそれを知る術はない。