すな粉妄想日記

夜中にトールはふっと目を覚ました。

深い水の底から浮かび上がるかのような感覚。

頭の中のもやがさあっと晴れて、
意識が鮮明になっていく。

眠気はすっかり消え失せてしまった。

再び眠る気にはなれそうもないので、
身を起こしてベッドから出る。

カーテンをそっと開けると、
柔らかな月光がうっすらと差し込んできた。

夜明けまではまだまだ時間がありそうだった。

さてどうしようかと思案した時、

「ううん…」

ベッドの中から小さな声。

隣で眠っていた弟のものだ。

布団がもぞもぞと動いている。

起こしてしまったか、と慌てて近寄ってみると…

瞼は閉じられたまま、すやすやと軽い寝息。

どうやら意識はまだ眠りの中のようだった。

が、しかし。

その手は、せわしなく
シーツの上を往復していた。

何かを探すように…

ついさっきまでトールが
眠っていた場所を。

「……っ！！」

行動の意味を理解した
トールは、思わず叫び出しそうになる。

それをぐっとこらえると
弟を起こさないよう、静かにベッドに潜り込む。

胸に込み上げる愛しさ。

所在なさげにさまよう可愛い手を
優しく握り締め、そっと耳に囁いた。

「ユーゴ…兄さんはここだぞ」