すな粉妄想日記

何事もない時だったなら、
それはとても美しい光景として
目に映った事だろう。

透明な水が塔内の明かりを反射して輝き、
流れ落ちるその音は耳に心地良く響く。

魔物の姿が見当たらなければ、
荘厳ささえ感じられる場所だった。

けれども。

今のユーゴには、何もかもが怒りの
対象にしかなりえなかった。

背中に感じる冷やりとした床の感触が、
たまらなく不愉快だった。

そして、

それ以上に熱く燃える身の内が、
我慢できなかった。

「……っ…！」

悔しさのあまり、唇を強く噛み締める。

自分はこんなにも無力だったのか。

いいように弄ばれ、蹂躙されているというのに…

まともな抵抗すらできない。

全身に漲る怒りにもかかわらず、
体はユーゴの意思よりも
目前の相手に屈しようとしている。

「あっ…！！」

強烈な快感に貫かれ、嬌声がほとばしった。

「い、いや…、あ…っ…」

無骨な指先が執拗に秘所をまさぐる。

あちこちに容赦なく食指を伸ばし、
敏感なところを探り当てていく。

「…やめ、やめろ…っ！！」

必死の思いで上げる拒絶の声は、
悲しいくらいに弱々しい。

自分を組み敷いている相手の
勝ち誇ったような笑いが、胸を抉る。

「……どう…してっ…、」

どうしてこんな、裏切り者なんかに…

神官の地位を捨て、そうして得た
騎士の地位さえも捨てて、魔に堕ちた兄。

昔の姿は、見る影もない。

「…ぅ、く、……」

正式な後継者として認められたのは、
自分のはずなのに…

ユーゴは自らの力の無さに、
ただ絶望するしかなかった。