すな粉妄想日記

兄の行動はどこまでも慎重だった。

自分を気遣ってくれているのが、
はっきりと分かる。

あの時…、

無理矢理された時とは全く違う。

ユーゴは瞳を閉じたまま、
その感覚に身を委ねた。

肌と肌が触れあう、確かな心地良さ。

以前のような違和感や嫌悪感は、
まるで感じなかった。

（あ…）

トールの唇が、ゆっくりと
首筋に押し当てられる。

「んん…っ、」

くすぐったさに思わず体を捩る。

「すまん…、嫌だったか？」

トールは慌てて顔を上げた。

少しでも不快な思いはさせたくない。

そんな気遣いからだった。

「あ…いや、そうじゃない」

兄の言葉をユーゴは急いで否定する。

「その…、何だかくすぐったくて」

素直にそう告げると、
兄はほっとした表情になった。

それを見て、ユーゴはどきりとした。

瞳の奥に秘められた感情が、
ひしひしと伝わってきたからだ。

それこそ、どんな鈍い人間でも
はっきりと分かる程に。

目の前の相手に対する
深い愛情、愛おしさ。

（トール兄さん…）

兄がこんなにも、自分を
想っていてくれたなんて。

その事実にユーゴは
胸の奥が熱くなるのを感じた。