すな粉妄想日記

どうしてこんな選択をしたのか、
自分でも分からなかった。

胸の鼓動がこれ以上ない程高鳴る。

すぐ側の兄にも聞こえてしまうのではないかと
思うくらいに。

「ユーゴ…」

トールは心配そうな声で弟を呼んだ。

「本気なのか？…その、」

先を続けるのをためらう兄に、
ユーゴはできる限り平静を装って答える。

「いいんだ」

それは自分自身に向けた言葉でもあった。

正直、怖くないと言えば嘘になる。

力ずくで組み伏せられた時の、あの恐怖。

強引に体を貫かれた時の、想像を絶する痛み。

思い出すだけで身が竦んだ。

しかし…

『もう行かないと』

そう言って、兄が背中を向けた瞬間。

『お前に会えて嬉しかったよ』

ユーゴの胸に、
熱い想いが湧き上がった。

意地もプライドも歯止めにならない、
強い感情。

それは紛れもなく、兄に対する愛情だった。

『待ってくれ…！！』

咄嗟に手を伸ばして兄の背中に縋った。

そして口をついて出た言葉は、
自分でも信じられないものだった。