すな粉妄想日記

（……最低、か）

トールは心の中で呟く。

（その通りかもしれんな）

自嘲気味な笑みを浮かべ、
指先を這わせる。

「！あっ……」

相手から、艶めいた喘ぎが発せられた。

こうした事に関してはまだ未熟な、
何も知らない無垢な体……

それを支配する喜びが自分を満たしている事を、
トールは自覚していた。

激しい罪悪感を覚えつつも、止める事はできない。

人としての倫理観もかなぐり捨てて、
湧き上がる欲望に身を任せる。

あまりに甘美すぎる誘惑に
理性はあっけなく膝を屈した。

「……ん、くぅ……！！」

涙で濡れた碧い瞳が、
妙に色気を帯びて見える。

唇から漏れ出す吐息には
艶かしい響きが交じっていた。

「はぁ……、ぁ…っ……」

そんな弟の姿を見て、トールは思い知る。

どれだけ自分が、その想いを
強く閉じ込めていたのか……

「ユーゴ…」

弟に対する歪な愛情。

愛しながらも、憎んでいた。

自分を超える類いまれな才能を
喜ばしく思う反面、嫉妬や絶望感に苛まれて。

愛しさと劣等感がないまぜになった
矛盾する感情。

こんな事がなければ、
ずっと秘めたままにしておけたかもしれない。

けれど……

（本当に、俺は……）

もう、後戻りはできなかった。

（……最低な男だ）