すな粉妄想日記

「…聞いてくれ」

トールは、ユーゴの目を見据えながら
きっぱりと告げた。

「俺は…お前の気持ちを受け入れようと思う」

「…！？」

「許されない事かもしれないが、自分の心に嘘はつけん」

「………」

「お前を、愛している…ユーゴ」

真剣そのもののトールを見て、
ユーゴは慌てふためいた。

「ちょ、ちょっと待て！！」

必死で体をもぎ離すと、

「あんた、今日が何の日か分かってるのか？」

カレンダーを指差しながら叫んだ。

「？…４月１日だが…それがどうした」

「だ、だから！！エイプリルフールだろ！！」

「嘘をついても構わない日、か？」

「そ、そうだ！！」

「馬鹿を言え」

トールの表情が、一段と厳しさを増した。

思わずユーゴは身を竦める。

「あんな告白…冗談で口にするものじゃないだろう」

「…！！」

突然、冷水を浴びせられたような気がした。

今までの浮かれた気分が
たちまち吹き飛んでしまう。

ユーゴはただ、うろたえるしかなかった。

「だから…」

逞しい兄の腕が、背中と腰に回される。

「あ……」

息がかかるほど間近に
その顔が迫った。

兄の迫力に気圧されて、
身動きひとつできない。

「こういう時は、目を閉じるものだぞ」

「……！」

兄の本気をひしひしと感じる。

気配が更に近づく。

唇と唇が触れ合いそうになる。

ユーゴは自分の軽率な行動を
激しく後悔した。

「に…兄さ…っ…」

たまりかねて、素直に
許しを乞おうと思ったその時、

「っ！？」

こつん、と額に軽い衝撃を受けた。

「……え」

ユーゴが目を見開くと、
そこには相好を崩した兄の顔が。

思わず瞬きをすると、トールは
悪戯っぽい笑みを浮かべ
片目を瞑ってみせた。

「～～っ！！」

たちまち、ユーゴは耳まで赤くなる。

兄にからかわれたのだ、と理解した。

「あんたって人は…っ、！！」

声高に抗議しようとすると、
トールが再び瞳を覗き込んできた。

「…冗談だと…思うか？」