すな粉妄想日記

激しい風と雨が、叩き付けるように襲って来る。

俺はとにかく全力で走るしかなかった。

豪雨で視界が遮られ、強風に煽られた体は
何度もバランスを崩してよろめいた。

それでもできる限り俺は急いだ。

弟が、心配だったからだ。

あいつは雷が苦手だ。

いつも泣きながら俺の所へ
やってくるくらいなのだ。

一刻も早く、側にいてやらなければ…

ようやく家が見えた時は、髪も服もずぶ濡れだった。

窓から漏れる光に安堵した俺は、
思わず目を見張った。

玄関に、誰かの姿があったからだ。

小さくて細いその影は…

「！？ユーゴ！？」

確認するなり、俺は叫んだ。

「！兄さん…！！」

ユーゴは俺に気づくと、
雨の中を駆け出す。

水飛沫を上げながら、
俺の胸に飛び込んで来た。

「良かった…、兄さん…」

「ユーゴ、お前…」

小さな肩を抱いてやると、
その冷たさに驚く。

「まさか…ずっと待っていたのか！？」

この、雷雨の中を。

玄関の屋根の下とはいえ…

大嫌いな雷が轟く中を。

俺の言葉に、弟はこくりと頷いた。

「雨がひどくなったから…」

碧い瞳が見上げてくる。

「兄さんがちゃんと帰ってこられるかなって」

「……！！」

たちまち胸に熱いものが込み上げてきて、
俺は力一杯ユーゴを抱きしめた。