すな粉妄想日記

「…ここまでくれば、大丈夫か」

トールはふう、と息をつくと
静かに少女を床へ下ろした。

「…う…」

少女は僅かに身じろぎしたが
目を覚ます気配はない。

しかし、命に別状はなさそうだ。

ここならいくらか安全だし、
仲間に見つけてもらえば良いだろう。

つい先程…

少女が悪魔の回廊で倒れていた。

団長の愛娘、ユニカだった。

今のトールにとっては敵だ。

見捨てるのが正しい選択と
いう事になる。

が、考えるより早く走り出していた。

そのままユニカを抱きかかえ、
今の場所へと運んでやった。

闇の連中に知られでもしたら、
ただでは済むまい。

（裏切り者を演じているというのにな…）

自らの行動を振り返り、
トールは思わず苦笑する。

その時。

背後に只ならぬ気配を感じた。

「あんた…何をしている！？」

良く見知った声。

咄嗟に振り向いたトールは、
愕然とする。

そこには全身に、
怒りを漲らせた弟が立っていた。