すな粉妄想日記

背中に強い衝撃を受け、
ユーゴは息を詰まらせる。

何が起こったのか、瞬時には理解できなかった。

「ぐっ…！！」

身を起こそうとして
思わず呻き声を上げた。

体中に走る激痛。

「…っ、……」

痛みに顔を顰めながら、
それでも必死で立ち上がろうした時。

「動くな」

低い声と共に、冷やりとした感触。

「……！！」

背筋をぞくりと冷たいものが伝う。

金属の鋭い爪が、喉元に突きつけられていた。

ユーゴは思わず息を呑む。

視界の端に、兄の姿を認める。

不敵に笑うその表情からは、
勝利を確信した者の余裕が伺えた。

「く、…うっ…！」

それを目にした途端、
恐怖がたちまち怒りに変わった。

悔しさのあまり、唇をきつく噛み締める。

最も負けたくない相手に
こんな醜態を晒して…

「まだまだ、未熟だな」

勝ち誇ったような口調で、トールが告げた。

「な、に…！！」

ユーゴは激しい憎悪を込めて
相手を見やる。

が、白い肌に鋭く固い爪が
ぐっと食い込み。

「……っ！！」

再び、恐怖が背筋を伝う。

痛みを感じる程ではないが、
命の危機を自覚するには十分だった。

自分の命は目前の兄次第。

このまま、相手に屈するしかないのか…

「……う…っ…」

屈辱で瞳に涙が滲んだ。