すな粉妄想日記

（……どういう事だ？）

目を覚ましたトールは、
思わず周りを見回した。

朝の柔らかい光がカーテンを通して
差し込んでいる。

穏やかな、冬の朝。

ベッドの中にいるのは、自分だけだった。

（……夢、か……）

大きく深呼吸をすると、
トールは気持ちを静めようと試みた。

胸の鼓動が高鳴っている。

まだ興奮冷めやらぬ…といった所だ。

どうして、あんな夢を？

何度も自問自答を繰り返す。

とてつもなく悪い事をしてしまったような罪悪感。

（…とりあえず、起きよう）

あれは、夢だったんだ。

冷たい空気に当たれば
目も覚めるだろう。

そう思いながら身を起こして
ベッドから抜け出した。

ひやりとした冬の冷気が
肌に触れる。

思わず身震いをすると、
急いで着替えに取り掛かった。

と、その時。

「兄さん…起きてる？」

ノックの音と同時に
聞き慣れた声。

「…っ！！」

鼓動が跳ね上がり、
心臓が口から飛び出そうになる。

超特急で身支度を済ませ、
ドアの方へと足を向けた。

「入っても、いい？」

「あ、ああ！」

慌てふためきながら、
訪問者を出迎える。

たった今…
夢に見ていた弟を。

ユーゴは無邪気な笑顔で佇んでいた。

「お早う、兄さん」

「お早う…早いな、ユーゴ」

照れ隠しのため、トールは
くしゃくしゃとその頭を撫でる。

「わわわ」

弟はくすぐったそうに肩を竦めた。

子供らしく、愛らしい仕草。

そんな様子が、トールの心を穏やかにする。

興奮気味だった胸の高まりも収まっていく。

ああ、あれはやっぱりただの夢だった…

罪悪感を感じつつ、
ほっと安堵の溜息をついた。

「あ…そうだ」

が、しかし。

「ねえ、兄さん。初夢は見た？」