すな粉妄想日記

「見つかったか？ユーゴ」

「…ううん」

「そうか…」

弟の返事を聞いて、トールは
大きく肩を落とした。

（参ったな…）

ユーゴもそんな兄の様子を見て
不安げな表情を浮かべる。

（まさか、ここまで見つからないとは…）

トールはいつものように、
弟とその友達リコの面倒を見ていた。

歳が離れているので、
２人に合わせて遊んでやるのが常である。

今日は、かくれんぼをする事に決めた。

適度に頭と体を使うから、
子供にはもってこいの遊びだ。

ユーゴとリコを探すのは
そう難しくはないだろう。

適度に探すふりをした後、
いっぺんに見つけてやればいい。

実際、ユーゴは開始１分で発見した。

庭の茂みの中にいたが、
葉をかき分けた後がしっかり残っている。

わざと何度か素通りしたりしながら
見つけてやると、弟は気恥ずかしそうに

「見つかっちゃった…」

と微笑んだ。

その可愛さたるや、尋常でないものがあった。

実はかくれんぼとは、
見つけてもらうのが楽しいのではないか…

こんなに愛らしい弟ならば、
どれ程遠くにいても探しに行ってやれる。

兄バカぶりを展開しつつ、
トールは次にリコを探した。

ファクト家の庭はかなり広いが、
隠れた子供を探すのはそう難しくはない…

はずだった。

予想に反して、リコはなかなか
見つからなかったのだ。

子供が入り込めそうな場所は
残らず確認してみた。

しかし、リコの姿は見当たらない。

そう突飛で無茶な事をするタイプでは
なさそうなのだが…

とにかく見つからない。

冗談抜きの本気で探しても見つからない。

（さすが、知恵の神官の家の子だ…）

妙な感心をしながらも、
トールは焦り始めた。

かれこれ３０分以上は経っただろうか。

最早おそらく自分達だけでは、
リコを見つけ出すのは不可能だ。

深い溜め息をつくと、
トールは弟に向かってこう言った。

「ユーゴ…父上を呼んで来てくれ」