すな粉妄想日記

「夕べは、どこへ行っていた？」

唐突にそう聞かれて
ユーゴは狼狽した。

わざわざ自室に呼びつけたからには、
相応の理由があると思っていたが…

この質問と、何か関係があるのだろうか。

もしあるのだとしたら…、

「朝まで部屋に戻らなかったようだが」

背筋にぞくりと冷たいものが走った。

まさか…

気づかれているのだろうか？

それとも、これから
探り出そうとしているのだろうか？

「………」

息を呑んで思考を巡らせる。

重い沈黙が部屋に流れた。

どちらにせよ、このまま黙っている訳にはいかない。

父を欺く事など不可能だ。

ためらいながらもユーゴは答を返した。

「……トール兄さんの部屋に」

「ほう」

父の態度からは、何も読み取れない。

「朝までずっと、か。何をしていた？」

淡々とした口調はそのままだ。

「…特に、何も。話をしていただけです」

それを聞いた途端、
カインの目つきが険しくなる。

「ユーゴ」

突然名を呼ばれて、ユーゴはびくりと
身を竦ませた。

「共に暮らしている兄弟が
一晩中一緒にいて、ただ話をしていただけ。
……そう言うのだな」

自分の発言を繰り返され、
その不自然さに嫌でも気づく。

やはり父は…知っているのだ。

夕べ自分が、何をしていたかを。

額にじっとりと冷や汗が浮かぶ。

寒くもないのに体が震え始める。

「もう一度聞く」

それは死刑宣告のように、
ユーゴの頭に響き渡った。

「お前は、トールの部屋で何をしていたのだ」