すな粉妄想日記

「…兄さんは」

まっすぐな瞳で見上げながら、
ユーゴが尋ねる。

「どうしてそんなに優しいの…？」

囁きにも近いその声は、どこか悲しげだ。

「僕は…何もできないのに」

そう言ってまた、小さな弟は俯く。

大好きな兄に対して、
自分は何１つしてやれない…

そんな無力感がユーゴを
苛んでいる。

瞳の端に残る涙が僅かに光った。

「………」

その心中を察して、トールは顔を曇らせる。

まだ幼い弟は、自分で自分の価値を見出す事ができない。

周りの人間の態度から判断するしかない。

最も強い影響力を持つのは、親だ。

そしてその親から否定されるような事があれば…

「……ユーゴ」

いたたまれない気持ちになって、
トールはユーゴを強く抱きしめた。

「あ…」

いきなりの抱擁に、弟が目を見開く。

小柄なその体はトールの腕の中に
すっぽりと収まってしまう。

温かく、柔らかな感触が
伝わって来た。

まだ、こんなに幼いのに…

「ユーゴ…俺は」

真剣な口調で兄は弟に告げる。

「お前が大切だ」

嘘偽りのない、トールの本心。

「才能だとか、優秀だとか…
そんな事は」

そこで一旦言葉を切り、ユーゴの顔を見つめた。

（ああ……本当に）

愛しさが止めどなくが溢れてくる。

自分がどれだけ弟を想っているか、
嫌というほど実感する。

「関係ない。俺は、今のお前…
ユーゴ＝ファクト自身を愛しているんだ」