すな粉妄想日記

ユーゴが落ち着くのを待って、
トールは柔らかな草の上に弟を横たわらせた。

濡れた頬に唇を押し当てると、
涙の塩辛い味がした。

口付けを何度か繰り返して涙を拭ってやる。

「……ん…」

ユーゴがくすぐったそうに身じろぎをした。

唇を離してその顔を覗き込むと、
涙で潤んだ瞳が自分を見つめる。

「…兄さん…」

赤く泣き腫らした目が痛々しい。

トールの胸が、弟への想いで一杯になる。

「ユーゴ」

愛情を込めて名前を呼んでやる。

ユーゴ。

俺の弟。

大切な、何よりも大切な。

「…俺の事が、好きか？」

そう尋ねると、ユーゴは一瞬
驚いたような顔になったが、
すぐに小さく頷いた。

「……うん」

涙の筋を残した頬が赤く染まる。

「どうしてだ？」

「……え…」

「どうして、俺が好きなんだ？」

予想外の質問にユーゴは戸惑う。

少し考えた後、おずおずと口を開いた。

「兄さんは…優しいから」

恥ずかしそうに言って目を伏せる。

頬が更に赤みを増す。

「僕のことを…、大切にしてくれる」

答を聞いたトールは、満足そうに頷いた。

「そうか」

そんな兄の様子を見て、ユーゴも顔を綻ばせる。

しばらく視線を交し合った後、
トールがゆっくりと告げた。

「お前が俺を好きでいてくれるのは…」

穏やかな微笑みを弟に向ける。

「俺が優秀だからじゃないだろう？」