すな粉妄想日記

その結論に至った時、
再び怒りが込み上げてきた。

トールの髪を乱暴に掴むと
強引に自分の方へ向けさせる。

精彩を欠いた瞳が、ユーゴの姿を映し出す。

「…あんたは、最低だ」

絞り出すように放った言葉に
深い憎しみが宿る。

「自分の欲望を満たしたくて、
僕を襲ったんだろう？」

「……！」

トールの目に動揺の色が浮かんだ。

唇が何か言いたげに震える。

しかしユーゴはそれを無視した。

「僕なら、誰にも気付かれずにすむからな」

言葉と同時に溢れ出す、忌まわしい記憶。

尊敬する兄が豹変したあの時…

どんなに泣いても叫んでも、
兄は止めてくれなかった。

恐怖と絶望におののきながら、
力ずくで陵辱された。

想像を絶する体の痛みと、
いまだ消える事のない心の傷。

「感謝しろよ。僕は…、
誰にもあの事を話さずにいてやったんだ」

吐き捨てるように告げる。

話さない。話せる訳がない。

英雄と呼ばれた男が犯した、醜悪な罪。

けれども、誰がそれを信じるというのか？

信じてもらえるどころか
優秀な兄を妬む弟の虚言とさえとられかねない。

ユーゴはたった１人、
苦しみ続けなければならなかったのだ。

「……あんたのせいで…僕は…！」

激しい怒りがまた欲望を掻き立てた。