すな粉妄想日記

それは、ひどく唐突に訪れた。

待ち望んでいた事のはずなのに、
あまりに急すぎて感情が追いつかない。

掌に収まる小さなＳＤカードを見ても、
どんな顔反応をすれば良いのか分からなかった。

「……それ以外のデータは全て消した」

淡々と、目前の人物が告げる。

「信じるかどうかは君次第だがね」

そう言われて、
ユーゴはようやく口を開いた。

「……どうして、突然……」

動揺を隠せないまま尋ねる。

解放された喜びよりも、
困惑の方が勝っていた。

あれだけ自分に執着していたのに…

理由がまるで分からなかったからだ。

思い当たる事も、何一つ浮かんでこない。

「先日の件は…私から誘ったと訂正しておいてやろう」

それに答えることなく、ダレスは言葉を続けた。

「君から、…あいつ…トールへの気持ちを
相談された事にして」

「！！」

ユーゴの心臓が、どくん、と高鳴った。

微かな希望が胸に灯る。

もしダレスの言葉が本当なら…
本当に誤解を解いてもらえるなら。

兄との関係を、多少なりとも
修復できるかもしれない。

元通りとはいかないまでも、
今の冷え切った関係よりは…

（兄さんと……また……）

頬が微かに熱くなるのを感じる。

不思議と、疑う気持ちはなかった。

「…この間の質問に答えておこう」

用は済んだと言わんばかりに
踵を返して、ダレスが呟く。

冷たい口調は相変わらずだったが…

「そういう相手は…もう、望まない」

「え……？」

半ば呆然としながら、
ユーゴは遠ざかって行く背中を見つめた。

気のせいだろうか。

その後姿が、心なしか
寂しげに見えたのは。