すな粉妄想日記

トールはユーゴのマントを
脱がせると床の上に広げ、
そこに弟を横たわらせる。

「……」

ユーゴは不安そうな目を
兄に向けた。

今までの強気な態度は、
すっかり消えてしまっている。

その表情は、トールに幼い頃の彼を
思い出させた。

大人しくて、素直で、いつも
自分の後ばかり追いかけてきた頃の。

大丈夫だと言う代わりに、
トールはそっと弟の頭を撫でてやった。

「あ…」

さらさらと流れるような
髪の感触が、手の平に心地良く伝わってくる。

しばらくそうしていると、
安心したのか弟の表情が和らいできた。

やがて、ためらいがちに
ユーゴは口を開いた。

「…本当に、するのか？」

白い頬が僅かに上気している。

「止めておくか？」

トールは優しく尋ねた。

本当はすぐにでも自分のものに
していまいたい位なのだが…

「我慢して、無理にする事じゃない」

求めているのは身体ではなく、
ユーゴ自身だ。

「ち、違う…！」

兄の問いに、
弟は慌ててかぶりを振った。

「僕は…、その…」

今にも消え入りそうな声で答える。

「初めて…だから」

その言葉がどれ程トールを喜ばせたか、
ユーゴには知る由もなかった。