すな粉妄想日記

「……兄貴ってさ、本当に勝手だよな」

溜息をつきながらそう零したのは、
黒髪の青年だった。

「それなりに地位もあって、生活も不自由してた
訳じゃないんだぜ？それがなんで…」

グラスを手にしたまま、
ぶつぶつと独り言のように文句を綴っている。

「全くもって理解できねえ…」

「……分かるな。その気持ち」

唐突に相槌を打ったのは、
金髪の少年だった。

強く頷きつつ、青年の言葉に同意を示す。

「年上だからって…いつも勝手な事ばかりする」

淡々としてはいるが、明らかに非難の色がこもる口調。

「人の気持ちもお構いなしに
自分だけで決めて、しかもさっさと実行するんだ」

「そう！そうなんだよな！！
……一言くらい、相談してくれたっていいだろうに」

「散々好き勝手しておきながら、
いざ顔を合わせると兄貴面するし」

「ああ！腹が立つよなそれ！！」

「とにかく、兄って奴は自分勝手なんだ」

「激しく同意するぜ」

散々こき下ろした末、
どうやら２人は意気投合したようだった。

「…何だか、怒りが込み上げてきたな」

「そうだな…ここはやっぱり」

ほぼ同時に声が重なる。

「「本人に責任をとってもらおう」」

言うが早いか、青年と少年はすっくと立ち上がり、
それぞれの標的を探し始めた。

……そして。

幾ばくかの距離を置いた場所で、
２人の男が佇んでいた。

一部始終を目にしたその顔は
幽霊もかくやという程に青ざめている。

どちらからともなく漏れた呟きは、
近い将来自分達に降りかかるであろう修羅場を
心底憂うものであった。

「……誰だ……あいつらに酒飲ませたのは」