すな粉妄想日記

（……信じられない）

ユーゴは居間でお茶を淹れながら、
１人興奮していた。

まだ心臓が高鳴っている。

心なしか顔も熱い気がする。

（どうして…）

幾度も自問自答を繰り返す。

新年早々、よりにもよって、あんな夢を見るなんて。

（いや…ただの夢だろ）

先程からずっと自分にそう言い聞かせている。

しかし、あまりに衝撃的な内容だったため、
それで片付けてしまうのは至難の業だった。

夢は密かな願望の表れだと
どこかで読んだ気がする。

（冗談じゃない…！！）

否定するように頭を振る。

（そんなの、考えた事もない）

ユーゴが悶々としていると、
そこへ兄、トールがやって来た。

「！」

兄の姿を見た瞬間、
思わずユーゴの体が硬直する。

鼓動が再び激しくなる。

が、何も知らないトールは
微笑みながら挨拶してきた。

「お早う、ユーゴ。早いな？」

「あ、うん…。お正月だし」

必死で平静を装って返事をする。

何でもない、何でもない…

あれは…ただの夢なんだから。

「俺にも淹れてもらっていいか？」

ユーゴの手元に視線を向けて
トールが言った。

「あ、ああ。いいよ」

どうにも口調がぎこちない。

あまり会話をしない方が
無難かもしれない。

「悪いな」

そう言うと、トールはすたすたと歩き、
ソファに腰掛けた。

テーブルの上の新聞を手に取り
それを読み始める。

ユーゴはほっと、安堵の溜息をついた。

この間に、気持ちを切り替えてしまおう。

現実の兄を目にしていると、
本当に単なる夢だったのだと
実感できそうだった。

この兄が…あんな行為を要求する訳がない。

早く、忘れよう。

ユーゴは戸棚を開けて
兄の食器を探した。

（これでいいかな）

カップを手にしたその時。

「そういえば…」

おもむろにトールが
口を開いた。

「初夢は、見たか？」