すな粉妄想日記

俺は、ガレオン。

女神様達に仕える神殿騎士だ。

トバ家のサウル団長の元で
日々鍛錬に励んでいる。

騎士団の生活は厳しいが、
充実している。

平和のために身を捧げる決意に
迷いはない。

が、しかし……

気がかりな事が１つある。

それは俺の同僚、
トールの事だ。

六神官筆頭であるファクト家の長男。

そんな人間がどうして騎士団に入って来たのか……

不思議ではあるが、
神官家ともなれば色々込み入った
事情があるのだろう。

トールはとてもいい奴だし、
名門の出である事を鼻にかけたりもしない。

俺はあいつを
良き仲間だと思っている。

だから、気になるのだ。

あいつが……

トールが、夜な夜な
啜り泣きを漏らすのが。

懸命に堪える努力こそしているものの、
溢れる涙は止めようがないらしい。

しゃくりあげながら、しきりに体を震わせている。

その歳でホームシックかと
苦笑したが、どうも違うようだ。

合間合間に聞こえる、か細い呟き。

『……ユーゴ……』

ユーゴ。

トールはいつも、泣きながら
その名前を呼んでいる。

一体誰の事なのか、俺には分からなかった。

それがトールの弟の名前だと教えてくれたのは、
魔道師のカデナだった。

弟。

つまりあいつは、弟恋しさに
毎晩毎晩忍び泣きしていたわけだ。

トールの奴…大丈夫なんだろうか。