すな粉妄想日記

トールから全てを聞かされた
ユーゴは、呟くように言った。

「そうか……、父上だったのか……」

苦いものを飲み込んだような口調。

「どうりでフィーナ様やレア様が…黙っていた訳だ」

それは、あまりにも厳しく重い現実だった。

よりにもよって裏切り者が
自分達の身内だったのだから。

「……ユーゴ」

弟の心中を察したトールが、
心配そうに声をかける。

トールも真実を知った時は
あまりの事に愕然とした。

まさか父親がーカイン＝ファクトが…
全ての元凶だったとは。

皆の手前、表向きどうにか平静を保っているが、
内心ではまだ動揺が残っている。

何故父はあんな暴挙に出たのか。

事前に気づく事はできなかったのか。

なんとかして止める方法はなかったのか。

そんな思いが、代わる代わる交錯していた。

もう考えても仕方のない事なのに…

父と距離を取っていた自分でさえこうして、
気持ちの整理がつかないままなのだ。

弟はどれ程……

「大丈夫だよ」

「！」

トールの思考を遮って、ユーゴが答えた。

「…ショックじゃないと言えば嘘になるけど」

見つめてくる真っ直ぐな視線。

「僕には、兄さんがいる」

そう告げて微笑んだ弟の表情は、
思わずはっとするくらい大人びていた。