すな粉妄想日記

ユーゴは落ち着かない気持ちで
ベッドに潜り込んだ。

先程、兄の携帯から連絡があったのだが…

相手は兄ではなかった。

『…ユーゴだね？』

落ち着き払った、大人の声。

驚いて思わず息を呑んだが、
すぐに察した。

兄の、恋人であると。

その相手…ダレスはとても
礼儀正しく、もの柔らかだった。

１、２度顔を合わせた事はあったものの、
会話らしい会話をするのはこれが初めてだった。

兄とはまるで違う、静かな口調。

『すまないけれど、お兄さんは今夜、
こちらに泊まる事になった。君を心配しているから…』

何かあれば連絡してくれと言い残し、
話は終わった。

ユーゴは緊張のあまり、
どう答えたのか良く覚えていない。

とりあえず、兄をよろしくとか
そんな感じだったように思う。

「………」

どうにも気持ちが不安定で、
ごろりと寝返りを打つ。

兄に恋人がいる事については、
特に悪感情は持っていない。

むしろ、喜ばしい事だ。

それだけ兄を好いてくれる相手が
いるのだから。

しかし…

先程の電話は、衝撃的だった。

兄の携帯から…という点が、である。

そんなプライベートな物を
共有する仲なのかと。

そして、今夜は帰ってこない。

ユーゴとて年頃の男の子だ。

嫌が上にも、想像は膨らむ。

（……兄さん……）

今夜はとても眠れそうになかった。