すな粉妄想日記

「どうした、トール」

サウルは、真っ青な表情をして
佇んでいる部下に声をかけた。

「…団長」

その声に、うつむいていたトールは
のろのろと顔を上げる。

「いえ…」

いつもとはまるで比べ物にならない
消え入りそうな声だった。

「なんでもありません」

なんでもないどころか、
今にも死にそうな顔色をしている。

「…弟と、喧嘩でもしたのか？」

トールの瞳が、驚きに大きく見開かれた。

「！？ど、どうしてそれを！？」

どうしたもこうしたも、
この男がそこまで落ち込む理由など
それ以外にないではないか。

サウルは微笑みながら
できるだけ優しく言った。

「確か、お前の弟は私の娘と
同じくらいの年だったな」

サウルにとって、一人娘のユニカは
目の中に入れても痛くない位の存在だ。

無邪気に笑いながら駆け回る姿を見ると、
自らの親バカを自覚しつつも
つい顔を綻ばせてしまう。

（まあ、父よりはマシだと思うが…）

サウルの父である神官トバも、
孫娘をそれはそれは可愛がっているのだ。

なにせ神聖な職場である筈の
神殿にまでちょくちょく連れて行って
しまう。

先日などユニカが迷子になってしまい
大騒ぎになった。

サウルも、危険はないだろうと思いながらも
気が気ではなく、見つかった時は心底安堵した。

そんな訳だから、親子と兄弟の違いはあれど
トールの気持ちは良く判った。

「私で良ければ相談にのるぞ」