すな粉妄想日記

状況を把握すると、２人は
足早にその場を立ち去った。

穏やかな筈の木々のざわめきが、
やけに騒々しく感じられる。

「……」

「……」

しばらくはどちらも口をつぐんだまま、
黙々と歩き続けた。

流石にトールは落ち着きを取り戻していたが、
ユーゴは目に見えて動揺していた。

やがて沈黙に耐えられなくなったのか、
足元に視線を落としながらぼそりと呟く。

「……父上に、報告した方が…いいのかな」

別に告げ口をするつもりはない。

ただ、自分ではどうにも判断しようがないので、
そんな言葉が口をついて出たのだった。

トールもユーゴの胸中は理解できたから、
慎重に返事を返して来た。

「いや…、わざわざ父上の耳に
入れる程の事ではないだろう」

軽い口付け位なら、自分達だって
挨拶代わりにしょっちゅうしている。

とはいえ、先程目にした光景が
それに当てはまるとは全く思えなかったのだが…

もし万が一、本当に兄２人が
そういう関係だったのだとしても、
自分がどうこう言える立場ではない。

（…俺だって…）

ユーゴをとても愛しく思っている。

兄弟愛以上の感情を密かに抱いている。

しかしそれは、決して
表に出してはならないものだ。