すな粉妄想日記

「愛しているとも」

ダレスはにこりと微笑んだ。

「…え？」

何の躊躇もない返答に、
トールは一瞬面食らった。

当然だろうと言わんばかりの
兄の表情を凝視する。

落ち着き払った態度は、
いつもとまるで変わらない。

「可愛い弟だからな。もちろん、君やユーゴも」

「…な、」

そういう意味で…、と思わず脱力した。

が、慌てて質問を補足しようと再び口を開く。

聞きたいのは、そんな答えではない。

「違う…、そうではなくて」

何と言ったものか考えあぐね、
トールは視線を彷徨わせた。

顔が紅潮し、動悸が早くなる。

ダレスは静かに佇んだまま、
弟の様子を眺めていた。

何だか、楽しんでいるようにさえ見える。

「その…、つまり、兄弟としてではなくて…」

兄の視線に居心地の悪さを感じ、
つい早口になってしまう。

どうにか頭に浮かんだ文を、一気にまくしたてる。

「こ、恋人…のような」

言葉に出してしまってから、
いきなり気恥ずかしさに襲われた。

自分はなんとおかしな事を考えているのだろう？

兄が、弟にそんな想いを抱くなんて…

たった一度、口付けを交わした所を
目にしただけなのに。

馬鹿げた質問をしてしまったと、
早くも後悔し始めたその時。

「……フフ」

ダレスの唇から、低い笑い声が漏れた。

トールは弾かれたように顔を上げて、
兄の顔を見る。

「君が、ユーゴに抱いているものと同じ感情
…という意味かね？」