すな粉妄想日記

「…ダレス兄上」

居間のソファで読書をしていたダレスに、
ユーゴは少しためらいながら声を掛けた。

「ん？」

兄はゆっくりと顔を上げると、
穏やかな微笑を浮かべて返事をした。

「何だね、ユーゴ」

「うん…その。もし良かったら…
勉強を教えてもらいたいんだけど」

弟は遠慮がちにそう言った。

「兄上の邪魔にならなければ」

年が離れているせいか、この末の弟は
ダレスに対してとても気を遣う。

ふむ、と長兄は首を傾げる。

その動きに合わせて、
長い銀色の髪がさらりと揺れた。

「トールやダルクでは、駄目なのかね？」

「……」

すると弟は困ったような表情になり、
そのまま黙り込んだ。

「何か、不都合な事でもあるのかな」

兄の問いに、ユーゴは少し考えた後、
ぼそぼそと呟くように答えた。

「トール兄さんは僕を子供扱いしたがるし…
ダルク兄上は面倒臭そうにするし」

そう言って溜め息をつく。

「……ふむ」

ダレスは読みかけの本を静かに閉じて
弟を見上げた。

「そういう事なら、喜んでお相手しよう」

途端、ユーゴは顔を綻ばせた。

「ありがとう、兄上…」

「礼には及ばない。では、
私の部屋へ行くとしようか」

ユーゴが頷くと、ダレスはソファから
ゆっくりと立ち上がる。

そして２人は、居間を後にした。