すな粉妄想日記

どうして…こんな事になったのだろう？…

体を震わせながら、ユーゴ姫は激しく後悔しました。

やはり誘いに応じるべきではなかった、と。

いくら父に促されたからとは言え、
軽率に過ぎたと。

（……ダレス王子）

つい数分前までは、
尊敬の念すら抱いた相手だったのに…

（どうして……）

今、姫の目に写る王子は、
まるで別人のようでした。

表情こそ穏やかなものの、その内側に
激しい情欲を漲らせているのが分かります。

細い指先が剝き出しの肌を伝ってゆくと、
背中にぞくりとした感覚が走りました。

「ああ……」

これから自分が何をされるのかを想像して、
姫は再び、自分の迂闊さを恨みました。

夜、相手の部屋で２人きりになるなど…

あまりにも思慮を欠いた行動でした。

けれどもそれは、無理もない事だったかも
しれません。

男である自分がこんな目に合うなんて、
想像もできなかったからです。

それに何より、

『王子、僕は……』

身を切られるような思いで
秘密を告白した時…

『……男なのです』

姫は王子から、きっと軽蔑されるだろうと思っていました。

あからさまな侮蔑や嘲りの言葉を浴びせられる事も
覚悟していました。

しかし、そんな予想とは正反対の反応を、
王子は見せてくれたのです。

『存じております』

ユーゴ姫は、生まれた時から
女として育てられてきました。

本当は男であるにもかかわらず、です。

それは、父ーカイン＝ファクトの意思によるものでした。

後継者たる男子は１人で良い。

長男に余計な重圧をかけないため、
女の姿でいるようにと…

『お会いした時から、気づいていました』

驚きを隠せずにいる姫に向かって
王子は言いました。

『しかしそんな事は関係ありません』

男か女か…性別など問題ではないと。

『私は、貴方自身をお慕いしているのです』

その言葉を聞いたユーゴ姫は、
感動のあまり胸が熱くなりました。

『…ありがとうございます…、ダレス王子』