すな粉妄想日記

ユーゴ姫は、さすがに返事をためらいました。

いくら王子が魅力的な人柄とはいえ、
今日初めて会ったばかりの相手です。

その部屋に夜、訪ねて行くと言うのは…

「ユーゴ」

近くにいた父ーカインが、
おもむろに口を開きました。

「ダレス王子の言う通りにしなさい」

「…！は、はい…」

そう言われ、姫は反射的に答えてしまいました。

すると王子はにっこりと微笑んで、

「ありがとうございます。では…」

言いながら、姫の前に手を差し出します。

姫は静かに頷くと、その手を取りました。

男性とは思えないほど細くて華奢な手でした。

指先が触れた瞬間、姫の鼓動が激しく高鳴ります。

相手に聞こえてしまうのではないかと
不安になったユーゴ姫は、そっと王子の表情を伺いました。

ダレス王子は、相変わらず
穏やかな微笑みを浮かべています。

昼間と同じく、安心させてくれる笑顔でした。

ユーゴ姫はいくぶんほっとして、
王子の後について行きました。

部屋に入ると、王子は姫に椅子を勧めました。

「お茶を淹れましょう」

優雅な手つきでポットにお湯を注ぎます。

甘い芳香が部屋の中に広がりました。

独特の香りでした。

「どうぞ。私の国から持参してきたものです。
お口に合うと良いのですが」

「…ありがとうございます」

ユーゴ姫はカップを受け取ると、
お礼を言いました。